こんなにある! 融資を失敗するための方法
融資はいくつもの条件や内容を審査したうえでその可否が判断されるため、以外と思わぬ部分でのミスが失敗の原因となったりします。
特に創業時の融資では、それまでの業績が問題とならない分、満たさなければならない厳格な条件があるのですが、意外とこれをよく知らずに申し込んでしまう場合があります。
そこで、ここでは、融資申込み時によくある「失敗例」を挙げましたので、同じ過ちをしないよう注意してください。
○ 「間違った情報」を鵜呑みにしてしまい失敗するケース
・親兄弟から借りたお金は「自己資金」となる。
・金融機関から融資を受けたお金を自己資金として、さらに別の融資制度に申し込
むことができる。
・ノンバンクや他の金融機関から借りたお金でも、一度通帳に入れてしまえば「自
己資金」として認めてもらえる。
・日本政策金融公庫の「新創業融資」を申し込む場合には、必ずしも1/3以上の自
己資金がなくとも、事業計画書の内容が良ければ審査に通る。
・会社の登記をしてしまえば、自己資金の確認は会社登記簿の資本金の記載だけを
見て行われる。
○ 本来、取っておかなければならない許認可に気づかなかったため、融資が出なか
ったケース。
○ 他の会社を買って融資に申込みに失敗したケース。
○ 設備資金を先に購入してしまったために、申込み金額が不十分となってしまったケース。
○ 本店住所を他の会社の中にしてしまったため融資が下りなかったケース。
○ 運転資金と設備資金のバランスが悪かったため、融資を否決されてしまったケース。
○ 大手都市銀行に信用保証協会付融資を申し込んだため失敗したケース。
○ 会社の事業目的の中に融資不的確なものを入れてしまったケース。
○ 融資の否決や減額の可能性を全く考慮していなかったため、営業そのものができなくなってしまったケース。
○ 元金据え置き制度の申込みをしなかったため、通常の返済がすぐに始まってしまったケース
○ 奥さん名義での融資申込みにも関わらず、必要な許認可をご主人名義でしか取得していなかったケース
以上のようなケースでは、期待通りの融資は出ないと思われます。
ところで、これをご覧になっているあなたは、それぞれのケースで「なぜ、融資が出なかったのか?」 その原因がお分かりになったでしょうか?
もし、その原因がすべてわかるという方は、ご自身で事業計画をお作りになっても大丈夫だと思います。
けれど、これらの失敗の原因がさっぱりわからないというのであれば、少なくともご自身と似たようなケースについては、シッカリとその原因を突き止めて、対策をされることをお勧めします。
■こんなにある! 融資を失敗するための方法
設立登記が必要な場合と法人設立のメリット
法人設立が不要な場合・必要な場合
事業をするためには、何が何でも会社を作らなければならないわけではありません。
しかし、次のような場合では、必ず会社の設立をする必要があります。
・ 取引先が法人名での口座の開設を求めてきている。
・ 複数の人間が出資して営利事業を立ち上げたい。
・ 法人として融資を受けたい。
・ 事業をするにあたって、法人としての許認可が必要な場合
・ 学校法人や宗教法人などとして活動する場合
・ 受給資格者創業支援助成金など、法人化が要件となっている助成金の支給を受け
ようとする場合
法人設立によるメリットとデメリット
会社を設立して法人となることにより、次のようなメリットが生じます。
・ 信用力が大きくなる。
・ 法人専用の融資が受けられる。
・ 一部の融資で特典を利用できる。
※ 日本政策金融公庫の「新創業融資」では、法人で融資を受ける場合には、
その法人のみが債務を負担すればよく、代表者個人が連帯保証をしなくと
もよいという特典があります。
・ 所得税の軽減や消費税の免除など税制面で有利となる。
・ 人材の採用が有利となる。
・ 助成金などを利用しやすい。
一方、法人となることにより生じるデメリットとしては、次のようなものが考えられます。
・ 設立、運営についてのコストが多くかかる。
・ 赤字であっても最低限の税金を納めなければならない。
・ 税務処理や保険手続きが煩雑となる。
・ 社会的な責任が大きくなる。
なお、営業年数を考えた場合、個人にしても法人にしても、これはその開始のときからカウントされるため、仮に個人での営業経歴が長い場合でも、法人化した場合にはゼロからのスタートとして見られてしまう場合があります。
さらに、個人の取得した許認可は法人には承継できないなど問題もあるため、もし、将来的に法人化をすることを考えている場合には、早めにスタートした方がよいでしょう。
■設立登記が必要な場合と法人設立のメリット
考えなしの会社設立の落とし穴
平成17年6月29日第162回国会において新会社法が成立しました。
今回の改正では、これまでの商法、有限会社法、監査特例法を一つの法律に整理統合し条文を口語体に改めた他に、これまでになかった制度が多数取り込まれて、従来の会社のイメージを一新するものとなりました。
それでは、これにより会社設立後の融資は、どう変わったのでしょうか?
融資のための設立手続きのポイント
1.新創業融資を利用する際の「自己資金」不足が問題となりやすくなります。
これまでは最低資本額の制約があり、一定規模以下の会社を作るためには特例措置を受けることが必要でしたが、今後は、資本金1円以上で会社の設立をすることができるようになりました。
しかし、日本政策金融公庫の「新創業融資」を受けようとする場合には、
「 事業にかかる総費用の1/3以上の自己資金 」
が必要となります。
そのため、過小な資本で設立をした場合には、希望額の融資を受けにくくなるという問題が生じます。
2.「債務超過」へ転落する可能性が拡大します。
資本が過小である場合には、事業開始後にわずかな赤字でも、決算内容がすぐに債務超過状態となってしまいます。
そのため、このような場合には増資などをして資本額を増やさないと、金融機関からの融資を受けられなくなってしまいます。
3.安易に事業目的の決定をすると融資を受けられない場合があります。
今回の改正により、これまで厳格に行われてきた設立登記の際の事業目的の審査が大幅に緩和されました。
これにより現在では、違法な内容のものやあまりに抽象的なもの以外ならば、簡単に事業目的を登記することができるようになっています。
しかし、会社法の改正が行われたからといって、金融機関での融資の審査基準までもが変わったわけではありません。
そのため、「設立ができればよい」くらいの安易な考えで事業目的や、組織内容の決定をした結果、それが原因で融資がでないという事態が生じています。
このように登記手続きの緩和と融資要件や審査のポイントとは別物なので、会社の設立後にシッカリと融資を受けたいのならば、十分に融資のことも考えた設立手続きが必要となります。
4.自己資金を増やすためには、事前に現物出資の計画も必要。
新創業融資など一定割合の自己資金が必要となる融資を申し込む場合に、肝心の自己資金が少ないため十分な融資を受けられないというケースがあります。
このような場合には、「現物出資」の方法により資本額を増やすという手段が有効となります。
しかし、会社設立後にこの現物出資をしようとすると余計な時間と手続きのやり直しのための費用がかかってしまいます。
そのため、現物出資をする際には、希望する融資額と手持ちの自己資金のバランスを考えながら手続きを進めていくことが必要となります。
5.代表者に問題がないかの確認。
会社の設立手続きでは、基本的に誰であっても代表取締役となることができますが、融資の際には、代表取締役となった人について連帯保証を求められるのが普通です。
そのため、単純に出資額が多いという理由だけで、過去に金融事故を起こしている方や、すでに別会社で代表者になっている方を代表取締役にした場合には、それが原因で融資がでないことがあります。
以上のように融資を受けられる会社を作りたいのならば、最低でも「金(自己金)」、「目的」、「人」の3点に注意する必要があります。
■考えなしの会社設立の落とし穴
創業融資に失敗しないための会社設立の注意点 (その4 事業目的について)
登記と融資では目的の意味が違う?
現在では、会社法の施行に伴い設立登記の調査項目が少なくなったため、会社を作る場合でもだいぶ簡単にこれをすることができるようになりました。
以前の設立手続きでは、「類似商号」と「事業目的の適合性」という重要な調査項目があったのですが、その調査にはある程度の経験と知識が必要であったため、全くの素人の方ではその判断ができず、ある意味ここがプロとしての腕の見せ所ともなっていました。
この2点について、ご存じない方のためにこれを簡単に説明すると
そもそも商号には「同一目的のため、同一市町村内に類似する商号がある場合にはこれを登記することができない。」と決まりがありました。
そのため、これを新たに選定する際には、あらかじめ本店の予定所在地の市町村内の商号をすべて調査して、今回、設立登記で使用する商号と類似の商号がないことを確認してから、ようやく登記ができるというとても面倒な調査が必要でした。
これを「類似商号の確認」の調査といいます。
またさらに、登記をする際には類似の商号がないだけではダメで、これから登記をしようとする会社の事業目的は「明確」・「具体的」・「適法」でなければならないとされていたため、チョットでも変わった内容や表現のものについては、いちいち担当官の事前審査を受けてOKをもらってからでないと安心して登記が出せませんでした。
これを「事業目的の適合性」の調査といいます。
このように以前は、これらの各種の調査をしたうえで、ようやく登記申請ができる状況となっていたのですが、会社法の施行による設立登記手続きの簡略化にともない、以上の2つの調査については、ほとんどといってよいほど問題にならなくなりました。
そのようなわけで、最近では専門家を使わず、ご自分で設立登記をする方が増えているわけですが、かといって「これによって、融資手続きでの調査の内容までが簡略化されたわけではない」ということについては、ほとんどの方が真剣に考えていないというのが現状です。
これはどういうことかというと・・・
確かに登記の時の目的については、その内容が法に抵触するようなものでなければ、たいていは通るようになっています。
しかし一方で、融資の場合には、融資することができない業種というのがあらかじめ決まっていて、これを会社の目的として登記してしまった場合には、その目的を削除するか、設立手続きをやり直さない限り融資を受けることができなくなってしまいます。
以上のような業種のことを「融資(または保証)対象外業種」といいます。
一例をあげれば、次のようなものがこれに該当します。
農林・漁業、遊興娯楽業のうち風俗関連営業、金融業、学校法人、宗教法人、非営利団体(NPOを含む)、中間法人、LLP(有限責任事業組合) など
この「融資(または保証)対象外業種」は、金融機関ならばある程度共通しているのですが、中には独自の対象外業種を設定して金融機関もあり、その内容は微妙に異なったりします。
このように「登記が簡単にできるようになった。」ということの反面、「より目的の選定を慎重に行わなければならない。」ということが見落とされがちになっていますので、設立時にはよく融資のことまでも考えて行うということが重要です。
■創業融資に失敗しないための会社設立の注意点 (その4 事業目的について)
創業融資に失敗しないための会社設立の注意点 (その3 資本金について)
見せ金がばれる理由
よく自己資金が少ない場合などには、一時的に他から用立ててきた資金を通帳に入れ、これを自己資金として見せようとする方がいます。
このような行為を「見せ金」と言います。
これによって、登記簿上の資本金を大きくすることができれば、その分申し込むことができる融資額も大きくなるので、つい、してしまいたいと思うのはわかるのですが、残念ながらたいていの場合には見破られてしまいます。
なぜなら、金融機関側ではこのようなケースを想定して、その入金された金額についての裏付けを求めるからです。
具体例を挙げて説明します。
たとえば、あなたがノンバンクを利用して一時的に300万円の資本金を用意したとします。
確かに、単に登記簿上の資本金を大きくしたいだけならば、このやり方でも特に問題なくできますし、それなりの会社を作ることが可能です。
しかし、融資審査の際には、それだけでは済みません。
なぜなら、会社の登記簿と通帳だけでその資本金の有無を確認するだけではなく、必ず、その資本金の元となった代表者個人の通帳を確認して、その資本金がどのようにして作られたかの確認を行うからです。
その際には、個人の通帳には300万円という金額がいっぺんに振り込まれているわけですが、その出所をさらに追求されれば、合理的な説明はできないはずです。
このようなわけでその資本金が実態のない見せ金であるということがばれてしまうわけですが、もし、これを「手元にあった現金を入金したもの」と弁明した場合にはどうなるでしょうか?
残念ながら、このようなケースでは、たとえそれが事実であったとしても正当な自己資金とは認めてもらえません。
つまり、何らかの資料や証拠などでそれが事実であるということを決定的に認めさせることができない限り、そのお金はやはり「疑わしいもの」として見られてしまうのです。
では、そのお金を「親からもらったもの」とした場合には、その説明は通るでしょうか?
答えは△です。
原則として、親などから贈与された資金はこれを自己資金として認めてもらえることになっています。
しかし、この場合には、その親本人に対して電話でその確認がされる他、場合によってはこれを正式に資本金に振り替えてくれといわれる場合もあります。
また、その親の通帳についても確認がされることもあります。
このようなわけで、これらの手続きがキチンとできる方については原則OKなのですが、これを自己資金として認めてもらえるかは微妙な場合もあるので、結果的には△ということになります。
なお、見せ金を利用して、もし、これがばれた場合ですが、当然、その申し込んだ融資は認められないだけでなく、そのようなことをした経歴がその金融機関に残るため、しばらくの間はその後の審査結果に非常に大きなマイナスとなります。
ですので、このくらいの覚悟ができていない方は、うかつに見せ金などを利用しないようにしてください。
■創業融資に失敗しないための会社設立の注意点 (その3 資本金について)
創業融資に失敗しないための会社設立の注意点 (その2 自己資金を増やす方法について)
前回は、会社を設立時の資本金の準備の仕方ということで、融資の際にどれだけ自己資金(資本金)が大きく影響するかについてご説明しました。
しかし、中には思うように自己資金が準備できないという方も少なくないと思います。
そこで、今回は<>合法的に自己資金を増やす方法>をご紹介します。
自分の手持ちの現預金以外で自己資金を増やすには、以下の3つの方法があります。
① 協力者(出資者)を数多く集める。
そもそも会社は、複数の出資者の出資により設立するのが原則です。
しかし、最近ではその手軽さから自己もしくは家族だけで出資をするケースが大半となっています。
そのため、結果的に思うように資金を用意できず、「小さな資本金で設立する」=「思うように融資が借りられない」という
ジレンマに陥ることになります。
これを解決するためには、広く薄くでもよいので、できるだけ多くの人から出資を集める努力をするというのが、もっとも
基本的な対策となります。
確かにスポンサー集めは骨の折れる作業です。
しかし、身内だけでなく第三者を取り込むことに成功した場合には、資本金が充実するだけでなく、その事業に対する協
力者が多いという点からも、融資審査での大きなアピールポイントになります。
とはいえ、第三者を入れるということは、身内だけで好き勝手にはできなくなるということを意味するので、配当や経営権
の確保などについてのシッカリした配慮が必要です。
② 事業開始前に支払った費用を自己資金とする(「みなし自己資金」の活用)
自己資金として認められるのは、何も設立時に資本金として通帳に入っているお金だけではありません。
もし、あなたが事業開始前に、その事業のために支出した経費がある場合には、それについても自己資金として認めて
もらえる可能性があります。
このように、事業開始前にその事業のために支出した金額を「みなし自己資金」と言います。
たとえば、営業またはその準備のためにかかった経費や、事業開始前に仕入れたものの資金、事業に利用する目的で
事前に設備備品類を購入した場合の費用などがこれに該当します。
しかし、会社設立のための法定費用(登録免許税や公証人手数料)や、手数料(専門家に支払った報酬)などについ
ては事業のためと認められないケースが多いので注意が必要です。
また、よく
「一度、出資金として会社の通帳に入金した後、融資が出るまでの間に経費を支出したため通帳の残高が当初より減っ
てしまった場合には、どうなるのか?」
ということをご心配される方がいらっしゃいますが、日本政策金融公庫の新創業融資の場合には、このような場合でも
初めに入金された額をもって自己資金として認めてもらえるので心配はありません。
しかし、この場合でもその支出が「事業のために」されたものであることが必要ですとので、かかった経費については
シッカリと領収書や明細を残しておく必要があります。
なお、信用保証協会の保証付き融資では、日本政策金融公庫の場合と比較して自己資金と認めるられる範囲が異な
るので注意してください。
③ 現物出資をする。
会社の設立時に資本金とすることができるのは、金銭だけではありません。
それまで個人が所有していた動産などを出資の目的とすることも可能です。
このような出資の方法を「現物出資」と言います。
この方法で動産や不動産を出資することにより、現預金によらずとも大きく自己資金を増やすことができます。
その詳しい手続きについてはここでは省きますが、融資の審査では、主に次の点がポイントとなります。
・ 設立時の定款にキチンと現物出資の内容が記載されているか?
・ 現物出資の評価は、時価相場と同じ額になっているか?
・ 現物出資によるだけでなく、必要な分の現預金なども確保できているか?
これらのポイントのうち特に最後のものについては、現物出資の額に比べて、現預金がいくらあれば絶対大丈夫という明確な基準がありません。
しかし、現物出による財産は対外的な支払いに利用できないものであることを考えれば、事業計画上はこれがなくとも現預金分だけでその後の経営できる内容となっていることが必要になると思われます。
■創業融資に失敗しないための会社設立の注意点 (その2 自己資金を増やす方法について)
創業融資に失敗しないための会社設立の注意点 (その1 資本金について)
資本金とその準備の仕方
今回は、「創業融資に失敗しないための会社設立の注意点」その1として、<資本金とその準備の仕方>についてご説明いたします。
まず、会社を作るには、事業の元となる「資本金」が必要です。
そして、これを用意して登記(発起設立)をするまでの流れは、以下のとおりとなります。
① 発起人の個人の通帳から、各々の出資割合に応じた金額を代表者となるべき発起人の個人通帳に振り替える。
② 集められた出資金(=資本金のもと)について代表者が「払い込みがあったことの証明書」と「資本金の計上に関する証明書」を作成する。
※ 募集設立の場合には「払い込みがあったことの証明書」に代え、金融機関発行の払込金保管証明書を添付する。
③ ②の書類に代表者の個人通帳の写しを貼り付けて、押印する。
④ 登記申請書と他の必要書類とを綴って、法務局に提出する。
⑤ 登記完了後に会社名義の通帳を作り、代表者の通帳に集めた資本金を会社通帳に移し替える。
設立登記の申請だけを考えた場合の手続きとしては以上のとおりですが、ここで考えなければならないのは「資本金と融資」の関係です。
現在では、会社法の施行により極端なことをいえば1円以上ならば資本金の額はいくらで
もかまいません。
そのため中には、1万円や10万円などの過少な資本金で設立される方も増えています。
しかし、もし、この方が日本政策金融公庫などで無担保無保証の新創業融資を受けようとしたならば、どうなるでしょう?
新創業融資では、融資額は自己資金(ここでは「資本金」)の2倍までしか融資しないという厳格な要件があります。
そのため、仮に10万円で会社を作った場合で、それ以外に特に会社財産となるべきものがなければ、この人は20万円しか融資を受けられないということになってしまいます。
いくら経費のかからない事業を行っていくとしても、これでは話にならないのはお分かりになるでしょう。
このように、あとあと自己資金の条件のついている融資を狙う場合には、設立の時点でその後の借入額に見合った資本金を用意しないと「箸にも、棒にもかからない」ということになってしまいます。
しかし、日本政策金融公庫の新創業融資を申し込む際に、手持ちの現預金が少ないからといって、絶対に希望額の融資が受けられないというわけでもありません。
実は、そんな方でも合法的に自己資金を増やす方法があるのです。
そこで次回は、自己資金の増やし方についてお話します。
■創業融資に失敗しないための会社設立の注意点 (その1 資本金について)
融資の成否は設立のときに決まる
前回は、「形ばかりの設立をしてしまうと十分な融資が受けられなくなる」ということをお話ししました。
「設立」と「融資」。
一見、この両者の間には何の関係もないように見えます。
実際、設立の登記をする際には、法律で定められた項目だけを定款に記載し、これを申請書とあわせて提出すればよいだけですし、会社の作り方が悪かったから融資が出なかったという話もあまり聞きません。
だったら、設立登記などはどこがやっても同じなのだから、「早くて安いところに頼んだ方がいい。」と考えたとしたら、それは大きな間違いです。
仮に、設立の方法が悪いために融資がでなかったとしても、多くの人はそれに気づいていないだけだからです。
ここでチョット誤解しないでいただきたいのは、
「 設立手続きをキチンとしている 」 = 「 必ず融資が出る 」
ということをいいたいのではありません。
もちろん、後々の融資のことを考えて設立手続きを計画的に行っている場合でも、状況によっては希望する結果が出ないこともあります。
しかし、それは本人の計画不足や資金不足などによるものであって、手続きウンヌンだけではどうにもならない問題です。
ここで言いたいのはそういうことではなく、本来、融資を受けられるべきはずの人が設立の手続きが不十分であったために融資が受けられなくなってしまっているということなのです。
それほどまでに設立手続きと融資は密接に関係しています。
また、創業融資の場合には、たいていいくつかの条件が付けられています。
その中でも代表的なのが、「自己資金の額に応じて融資の限度額が決まってしまう」ということでしょう。
一般的に、このような条件は「自己資金条件」などと呼ばれています。
これは創業者が融資を受ける場合には、
「その上限額は手持ちの資金額に応じた分についてしかこれを受けることができない。」
というものなのですが、日本政策金融公庫の新創業融資などはその代表でしょう。
その他にも、一般の金融機関では融資をすることができない業種というものがあり、これに該当する場合には、やはり融資そのものを受けることができなくなります。
また、会社の本店が事業計画の中身とつじつまのあわないものだったり、他の会社の一部を間借りしているようなケースなどでも、審査上は大きな×がつくことになります。
このように創業融資の審査では、通常の融資にない特有の条件が付けられていることが多いのですが、ところで、ここまでの話で何か気付いたことはないでしょうか?
そうです。それは「 これらの項目は、すべて登記事項でもある 」ということです。
つまりは、融資を希望するならば、あらかじめこれらの審査のことも考えて設立をすべきなのです。
そして、もし、このことを考えずに手続きを行ってしまった場合には、変更手続き、もしくは設立手続きそのもののやり直しをしなければ融資が受けられないということも十分にあり得るのです。
これで最初に説明した、「形ばかりの設立をしてしまうと十分な融資が受けられなくなる」ということが少しはお分かりになったでしょうか?
そこで次回は、これら重要事項の一つずつを取り上げて、創業融資に失敗しないためにはどんな点に注意して設立をすればよいかについて、詳しく解説していきたいと思います。
■融資の成否は設立のときに決まる
創業者が使える資金調達とは
これから創業する方の中には、いくつもの資金調達の方法があると期待されている方が少なからずいらっしゃいます。
たとえば、ファンドや少人数私募債、事業への出資などがその一例です。
これらは確かに5年以上前のまだ景気が良い時には使えた方法ですが、経済情勢が厳しい現在では、創業者の方がこれらを利用できる可能性はほぼないものと思ってよいと思います。
特にファンドについては、原則として返済義務がないため、この利用を希望する方が多いのですが、最近ではそもそも本体のファンド自体が極端に数を減らしており、また、存続しているものであっても青色吐息な状況であるため、積極的に募集を行っているところはあまり見当たりません。
そのため、創業者の方が事実上使える資金調達としては、以下の3つに限定されるということになります。
① 公的機関による融資
② 親兄弟などによる援助(贈与など)
③ 同じ事業をしたいという希望を持った人間との共同経営
とはいえ、②と③については誰でもが利用できるわけではなく、また、それぞれについての問題点もあります。
そのため、誰でもが使える手段としては、①の公的機関による融資のみということになります。
しかし、これとても誰でもが申し込めば融資が得られるということではありません。
希望額の融資を受けるためには、シッカリした事前の計画が必要となります。
現在では会社法の改正により、払込金保管証明の準備などの面倒な手続きなしに、資本金1円からでも会社を作ることができるようになりました。
そのため、設立時のコストだけを考えて過少な資本金だけで、後の融資のことを考えずに、とりあえず形ばかりの設立をしてしまうというケースが目立っています。
しかし、これが結果的に融資の成功を大きく妨げているということに気づいている人はそんなに多くありません。
それでは、なぜ、設立時から準備をしないと、十分な融資が受けられなくのでしょうか?
次回は、この点についてくわしく解説いたします。
■創業者が使える資金調達とは