創業融資に失敗しないための会社設立の注意点 (その4 事業目的について)
登記と融資では目的の意味が違う?
現在では、会社法の施行に伴い設立登記の調査項目が少なくなったため、会社を作る場合でもだいぶ簡単にこれをすることができるようになりました。
以前の設立手続きでは、「類似商号」と「事業目的の適合性」という重要な調査項目があったのですが、その調査にはある程度の経験と知識が必要であったため、全くの素人の方ではその判断ができず、ある意味ここがプロとしての腕の見せ所ともなっていました。
この2点について、ご存じない方のためにこれを簡単に説明すると
そもそも商号には「同一目的のため、同一市町村内に類似する商号がある場合にはこれを登記することができない。」と決まりがありました。
そのため、これを新たに選定する際には、あらかじめ本店の予定所在地の市町村内の商号をすべて調査して、今回、設立登記で使用する商号と類似の商号がないことを確認してから、ようやく登記ができるというとても面倒な調査が必要でした。
これを「類似商号の確認」の調査といいます。
またさらに、登記をする際には類似の商号がないだけではダメで、これから登記をしようとする会社の事業目的は「明確」・「具体的」・「適法」でなければならないとされていたため、チョットでも変わった内容や表現のものについては、いちいち担当官の事前審査を受けてOKをもらってからでないと安心して登記が出せませんでした。
これを「事業目的の適合性」の調査といいます。
このように以前は、これらの各種の調査をしたうえで、ようやく登記申請ができる状況となっていたのですが、会社法の施行による設立登記手続きの簡略化にともない、以上の2つの調査については、ほとんどといってよいほど問題にならなくなりました。
そのようなわけで、最近では専門家を使わず、ご自分で設立登記をする方が増えているわけですが、かといって「これによって、融資手続きでの調査の内容までが簡略化されたわけではない」ということについては、ほとんどの方が真剣に考えていないというのが現状です。
これはどういうことかというと・・・
確かに登記の時の目的については、その内容が法に抵触するようなものでなければ、たいていは通るようになっています。
しかし一方で、融資の場合には、融資することができない業種というのがあらかじめ決まっていて、これを会社の目的として登記してしまった場合には、その目的を削除するか、設立手続きをやり直さない限り融資を受けることができなくなってしまいます。
以上のような業種のことを「融資(または保証)対象外業種」といいます。
一例をあげれば、次のようなものがこれに該当します。
農林・漁業、遊興娯楽業のうち風俗関連営業、金融業、学校法人、宗教法人、非営利団体(NPOを含む)、中間法人、LLP(有限責任事業組合) など
この「融資(または保証)対象外業種」は、金融機関ならばある程度共通しているのですが、中には独自の対象外業種を設定して金融機関もあり、その内容は微妙に異なったりします。
このように「登記が簡単にできるようになった。」ということの反面、「より目的の選定を慎重に行わなければならない。」ということが見落とされがちになっていますので、設立時にはよく融資のことまでも考えて行うということが重要です。