創業融資に失敗しないための会社設立の注意点 (その2 自己資金を増やす方法について)
前回は、会社を設立時の資本金の準備の仕方ということで、融資の際にどれだけ自己資金(資本金)が大きく影響するかについてご説明しました。
しかし、中には思うように自己資金が準備できないという方も少なくないと思います。
そこで、今回は<>合法的に自己資金を増やす方法>をご紹介します。
自分の手持ちの現預金以外で自己資金を増やすには、以下の3つの方法があります。
① 協力者(出資者)を数多く集める。
そもそも会社は、複数の出資者の出資により設立するのが原則です。
しかし、最近ではその手軽さから自己もしくは家族だけで出資をするケースが大半となっています。
そのため、結果的に思うように資金を用意できず、「小さな資本金で設立する」=「思うように融資が借りられない」という
ジレンマに陥ることになります。
これを解決するためには、広く薄くでもよいので、できるだけ多くの人から出資を集める努力をするというのが、もっとも
基本的な対策となります。
確かにスポンサー集めは骨の折れる作業です。
しかし、身内だけでなく第三者を取り込むことに成功した場合には、資本金が充実するだけでなく、その事業に対する協
力者が多いという点からも、融資審査での大きなアピールポイントになります。
とはいえ、第三者を入れるということは、身内だけで好き勝手にはできなくなるということを意味するので、配当や経営権
の確保などについてのシッカリした配慮が必要です。
② 事業開始前に支払った費用を自己資金とする(「みなし自己資金」の活用)
自己資金として認められるのは、何も設立時に資本金として通帳に入っているお金だけではありません。
もし、あなたが事業開始前に、その事業のために支出した経費がある場合には、それについても自己資金として認めて
もらえる可能性があります。
このように、事業開始前にその事業のために支出した金額を「みなし自己資金」と言います。
たとえば、営業またはその準備のためにかかった経費や、事業開始前に仕入れたものの資金、事業に利用する目的で
事前に設備備品類を購入した場合の費用などがこれに該当します。
しかし、会社設立のための法定費用(登録免許税や公証人手数料)や、手数料(専門家に支払った報酬)などについ
ては事業のためと認められないケースが多いので注意が必要です。
また、よく
「一度、出資金として会社の通帳に入金した後、融資が出るまでの間に経費を支出したため通帳の残高が当初より減っ
てしまった場合には、どうなるのか?」
ということをご心配される方がいらっしゃいますが、日本政策金融公庫の新創業融資の場合には、このような場合でも
初めに入金された額をもって自己資金として認めてもらえるので心配はありません。
しかし、この場合でもその支出が「事業のために」されたものであることが必要ですとので、かかった経費については
シッカリと領収書や明細を残しておく必要があります。
なお、信用保証協会の保証付き融資では、日本政策金融公庫の場合と比較して自己資金と認めるられる範囲が異な
るので注意してください。
③ 現物出資をする。
会社の設立時に資本金とすることができるのは、金銭だけではありません。
それまで個人が所有していた動産などを出資の目的とすることも可能です。
このような出資の方法を「現物出資」と言います。
この方法で動産や不動産を出資することにより、現預金によらずとも大きく自己資金を増やすことができます。
その詳しい手続きについてはここでは省きますが、融資の審査では、主に次の点がポイントとなります。
・ 設立時の定款にキチンと現物出資の内容が記載されているか?
・ 現物出資の評価は、時価相場と同じ額になっているか?
・ 現物出資によるだけでなく、必要な分の現預金なども確保できているか?
これらのポイントのうち特に最後のものについては、現物出資の額に比べて、現預金がいくらあれば絶対大丈夫という明確な基準がありません。
しかし、現物出による財産は対外的な支払いに利用できないものであることを考えれば、事業計画上はこれがなくとも現預金分だけでその後の経営できる内容となっていることが必要になると思われます。