融資の成否は設立のときに決まる
前回は、「形ばかりの設立をしてしまうと十分な融資が受けられなくなる」ということをお話ししました。
「設立」と「融資」。
一見、この両者の間には何の関係もないように見えます。
実際、設立の登記をする際には、法律で定められた項目だけを定款に記載し、これを申請書とあわせて提出すればよいだけですし、会社の作り方が悪かったから融資が出なかったという話もあまり聞きません。
だったら、設立登記などはどこがやっても同じなのだから、「早くて安いところに頼んだ方がいい。」と考えたとしたら、それは大きな間違いです。
仮に、設立の方法が悪いために融資がでなかったとしても、多くの人はそれに気づいていないだけだからです。
ここでチョット誤解しないでいただきたいのは、
「 設立手続きをキチンとしている 」 = 「 必ず融資が出る 」
ということをいいたいのではありません。
もちろん、後々の融資のことを考えて設立手続きを計画的に行っている場合でも、状況によっては希望する結果が出ないこともあります。
しかし、それは本人の計画不足や資金不足などによるものであって、手続きウンヌンだけではどうにもならない問題です。
ここで言いたいのはそういうことではなく、本来、融資を受けられるべきはずの人が設立の手続きが不十分であったために融資が受けられなくなってしまっているということなのです。
それほどまでに設立手続きと融資は密接に関係しています。
また、創業融資の場合には、たいていいくつかの条件が付けられています。
その中でも代表的なのが、「自己資金の額に応じて融資の限度額が決まってしまう」ということでしょう。
一般的に、このような条件は「自己資金条件」などと呼ばれています。
これは創業者が融資を受ける場合には、
「その上限額は手持ちの資金額に応じた分についてしかこれを受けることができない。」
というものなのですが、日本政策金融公庫の新創業融資などはその代表でしょう。
その他にも、一般の金融機関では融資をすることができない業種というものがあり、これに該当する場合には、やはり融資そのものを受けることができなくなります。
また、会社の本店が事業計画の中身とつじつまのあわないものだったり、他の会社の一部を間借りしているようなケースなどでも、審査上は大きな×がつくことになります。
このように創業融資の審査では、通常の融資にない特有の条件が付けられていることが多いのですが、ところで、ここまでの話で何か気付いたことはないでしょうか?
そうです。それは「 これらの項目は、すべて登記事項でもある 」ということです。
つまりは、融資を希望するならば、あらかじめこれらの審査のことも考えて設立をすべきなのです。
そして、もし、このことを考えずに手続きを行ってしまった場合には、変更手続き、もしくは設立手続きそのもののやり直しをしなければ融資が受けられないということも十分にあり得るのです。
これで最初に説明した、「形ばかりの設立をしてしまうと十分な融資が受けられなくなる」ということが少しはお分かりになったでしょうか?
そこで次回は、これら重要事項の一つずつを取り上げて、創業融資に失敗しないためにはどんな点に注意して設立をすればよいかについて、詳しく解説していきたいと思います。