取締役の責任は(3)・・・役員の責任の制限とは?
取締役の責任は(2)過失責任となる行為は?の中で取締役等の会社役員が会社に損害を与えた場合は損害賠償責任が生じるということをお伝えいたしましたが、以下にあげる3つの場合にはその責任の制限を設けることができます。
実際的に会社設立後に、取締役と会社との間に賠償責任が生じることが絶対ないとは言い切れません。しかしながら、取締役は会社の中でも重要な業務執行人なので、株主総会等で過失の内容を明らかにし、賠償責任に関しては制限を持たせる必要があれば制限を設けることが出来るようになっています。
1)賠償責任の全部免除
総株主の同意がある場合は原則として会社に対する賠償責任は免除されます。これは会社法424条に基づきます。
2)賠償責任の一部免除
○株主総会の特別決議(総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつその議決権の2/3以上の賛成)
○定款の定めに基づく取締役会の決議等
○責任限定契約(善意で重過失がない場合、定款に定めた額の範囲内であらかじめ定めた額と、株主総会の特別議決で定めた額のどちらか高い方を限度として賠償責任を負う旨をあらかじめ契約で定める事が出来ます)
以上は少し難しいことではありますが、今回シリーズで「取締役の責任」についてお伝えしているのはいかに取締役の選定や株主総会が大切なことか?をお知らせしたかったからです。上記のように責任を免除するには株主総会において、責任の原因となった事実・賠償責任の額・免除する事が出来る額と算定の根拠・責任の免除の理由とその額などを細かく開示しなくてはなりません。
最近では食品の産地の偽装問題などでもわかるように、大規模会社でないいわゆる中小の会社が内部告発などで問題が発覚し責任を代表取締役やその他役員が追及されるという例が多くなっています。
それは、いかなる不正も見逃さない消費者やマスコミの姿勢やその会社に勤める従業員などの姿勢によるものだと思います。しかしながら、会社と取締役は極めて密接な関係にあるので、なかなか問題が表面化しないし、会社から取締役に対して責任を追求することが難しい現状だと思います。そう考えると株主による会社への責任追及が重要なことであると思います。
会社設立の際にはもしかしたら気軽に取締役を選定したり、株主総会を簡略化したりすることも多いのが現状のようですが、この二つの事項は会社にとって極めて重要な役割を果たすことを充分ご理解下さい。
明日は、第三者に対する責任についてお伝えします