現物出資の価格の決定についての注意点--第4回---
株式会社設立の際の500万以下の現物出資について、3回の掲載をしてきました。
検査役の調査が不要な現物出資に関しては、財産の総額が「資本金の1/5以下かつ500万円以下」という定めがありましたが、新会社法の施行により、検査役の調査が不要な現物出資に関しては、「500万円以下」という要件に一本化され、この制度により面倒な手続きなしに手軽に現物出資ができるようになったことは確かです。
しかし「実際に会社設立をするとき、現物出資をするモノの価格は500万円以下ならいくらにしても問題はないのか?」
といった疑問を覚える方もたくさんいらっしゃることでしょう。
本日はこの問題について考えてみたいと思います。
現物出資の場合、現金とは異なり、モノの実際の価額がいくらであるかは発起人以外の人にはわからないことがあります。そのため例えば、発起人が10万円しか価値がないものを100万円の価値があると言って、出資するといったケースも起こりかねません。
以上のようなケースに関して会社法はどのように定めているのでしょうか?
これは会社法第五十二条(出資された財産等の価額が不足する場合の責任)できちんと定められております。
株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては、変更後の価額)に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負う。
上記をわかりやすく言うと...
会社成立時における現物出資財産等の価額が、定款に記載された価額に著しく不足するときは、原則として、発起人及び設立時取締役は、会社に対し、連帯して、その不足額を支払う義務を負うことになるということです。つまり先程の例でいうなら、100万円と10万円の差額である不足額90万円を、発起人及び設立時取締役が、会社に対し、連帯して支払う義務を負うことになります。
*会社設立登記申請の際に現物出資を行う場合は「調査報告書」という書類に設立時取締役と(監査役がいる場合は監査役)が押印することが義務付けられています。
ですから現物出資をする場合には現物の価格をきちんと把握して定款に記載しなくてはいけません。
例えば、車であれば中古車としての実勢価格がいくらになるのか中古車センターや車の査定サイトなどで確認したほうがよいでしょう。
また、パソコンやその他の物品については、オークションや中古品の販売サイトなどで調べて実勢価格を把握するようにしてください。